鳥よ鳥よ鳥たちよ [(音楽)ポップス]
ジョン・メイヤー / Heavier Things
夕暮れの空に飛ぶ鳥の群れを見て、
いったい彼らの社会には、どんなルールがあるのだろう、と
よく思っていた。
あの中に誰かキーパーソンがいて、粛々と群れをコントロールしているのだろうか、とか
若手の台頭や権力争いも、やっぱりあるのかな、とか
「かもめのジョナサン」的な、既成概念を打ち破る斬新な考えを持つ鳥も、
おそらくきっと居るのだろうな、いや居るに違いない。
と思っていた。
でもそういった鳥や魚などの「群れ」は、
たった3つの単純な行動から、「群れ」は再現できるらしい。
それは、
「仲間が多くいる方向に向かって飛ぶこと」
「近くの仲間たちと飛ぶスピードを合わせること」
「近づきすぎたら離れること」
なのだそうだ。
ものすごく単純明快である。
もちろんそれは「再現できる」ということであって、
鳥の群れがその理論そのものである、
というわけでは無いけれど。
でも少なくとも僕は、夕暮れの鳥たちの動きを見て、
その社会を、想像の中とはいえ作り上げていたのだ。
シンプルな行動が複数個そこにあるだけで、
複雑で神秘さえも含んだ物語が出来上がってしまうのだ。
ジョン・メイヤーの音楽は、まるで
様々な美しい模様を見せてくれる古き良きドミノ倒しのような、
解き放された快感と、
(後にまわした拳をギュっと握り締めるような)勇気を
与えてくれるのだけれど、
これもまた、神秘さえ感じてしまうほど、
「シンプルで大切なこと」がいくつか結合した結果なんだろうと思う。
火薬や電気仕掛けの装飾も
素晴らしいと思うときはあるのだけれど、
ドミノが次のドミノを倒して、そしてその次の・・・
という、たったそれだけのことに人の心は動かされてしまうのだ。
猫も名演技 [映画]
映画 / ティファニーで朝食を
一度観終わったあと、そのままもう一度はじめから観た。
気に入ったからではない。
「オードリーが演じるチャーミングで自由奔放な女性が、
ニューヨークを舞台に繰り広げるお洒落な映画」
そんな先入観もあったし、
途中までまあそう思いながら観ていたけれど、
それだけで終わる映画じゃないことに気がついたのは、
ポールが終わりのほうでホリーに投げかけた言葉を聞いて
何か大事なことをつかめそうだと思ったからだ。
だからもう一度はじめから観た。
「君には勇気がない
自分だけは自由の気でいても
生きるのが恐ろしいのだ
自分で作った檻の中にいるのだ
その檻はテキサスでも南米でもついて回る
自分からは逃げられないからだ」
奔放に生きることと、自由に生きることは違う。
ポールはオードリー演じるホリーにさんざん振り回されてきたが、
それでも彼女を愛している。
人が人にはじめに惹かれる理由はあるとしても、
「愛している」と思う理由、
「この人でなくちゃダメなんだ」と思い続ける理由なんて、
そもそもないような気がした。
ないというか、それはもう言葉で説明のできないことだ。
ポールが言い放ったその言葉は、ホリーの心に届いた。
それまで何度も「愛してる」とホリーに言ったけれど、
この言葉がホリーの心を動かした。
2回目に観たときに、この言葉が出てくるシーンを観て、
これから先きっとまた何度もこの映画を観る予感がした。
ワルツに乗せて [(音楽)ソウル]

- アーティスト: Prince
- 出版社/メーカー: Redline
- 発売日: 2001/11/20
- メディア: CD
プリンス / レインボー・チルドレン
どんなに大切に想っている人であろうとも、
ほんの些細なきっかけで意見が対立したとき、
自分の本意がうまく伝わらなくて、
もどかしくて、辛くて、悔しくて、情けなくなる時がある。
どんなに強く、「わかってよ!」と繰り返しても、
それは理解してくれるどころか、少しずつ距離が離れてしまう。
理解してほしい気持ちが高ければ高いほど、
その人が大切であればあるほど、
その距離は暗く深い溝になっていく。
プリンスのこの作品に収められている「She Loves Me 4 Me」を聴いたとき、
「こんな曲のように、伝えたいことを話すことが出来ればいいのに」
と思った。
とても優しいワルツに乗せて、歌うプリンスの歌声は、
まるで、
「僕には君に伝えたいことがたくさんあるんだ、
次から次へと言葉が溢れてくるんだ。
でも、僕と君にはまだまだ沢山の時間があるんだ。
いや、僕は君と沢山の時間を共有したいんだ。
だから、すこしずつ焦らないでゆっくりと、
このワルツに乗せて僕の気持ちを伝えていくよ。」
と言っている様だ。
こんがらがった糸をあわてて解くと逆効果なように、
理解しあうということは、
相互の時間を、すこしだけゆっくりと、
ワルツのように進めようとすることなのかもしれないな。
のび太が行くんなら、オレも行く! [映画]
映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
僕の涙腺をひっぱる事象は、僕自身だいたいわかっている。
いつもいっしょだから。
ドラえもんで言うと、
のび太の「僕は戦うよ。だってこんなのおかしいじゃないか!」
であって、
ジャイアンの「のび太が行くんなら、オレも行く!」
である。
もうこれは黄金比率であって、世の中で一番美しいと感じてしまう。
そしてやっぱり泣いてしまった映画は、
ずっとしっかり心に残っている。もちろんドラえもんも。
自分の人生でその映画を観れて良かった、と思う。
僕の涙は黄金比率と、そのヴァリエーションで流される。
だから自分の流す涙の原因はよくわかる。
なんかこう書くと、冷めてるように感じるかもしれないけれど、
いやしょうがないのだ。だって涙は自然に出るのだもの。
でもこのクレヨンしんちゃんの映画で泣いてしまったとき、
いままでとは違う涙が溢れた。
なんだかわからないけれど、涙が出てしまった。
黄金比率ヴァリエーションに似ているけれど、
ひっぱられている涙腺が違った。
いつも同じようなことで泣いているので、それはなんとなくわかるのだ。
まるで監督の演出が、僕の涙腺をわしづかみにしたようだった。
ツイてない日 [(音楽)フランス]
ケレン・アン / ノリータ
どうにもこうにもツイてないときがある。
朝は寝過ごすし、
電車で隣に座ったのは横柄な人だし、
何日か前の仕事のミスを指摘されるし、
意見は意味を取り間違えられるし。
「あー今日はホントにツイてないなぁ」
とこぼしてしまう日は誰にだってある。
そんな日は、とっとと帰って、家で不貞寝するのが一番いい。
冷静に考えてみれば、今日のツイてない出来事のほとんどは
くだらないことでもあるんだし。
「明日のことまで思い悩むな。
明日のことは明日自らが思い悩む。
その日の苦労は、その日だけで十分である」
って、聖書に書いてあるらしいし。
もし、不貞寝するまでも無いけれど、
なにかこう、胸の中がモヤモヤするのなら、
僕はこのケレン・アンのアルバムが癒してくれると思う。
いや「癒す」というよりは、
「ま、いっか」という気分にさせてくれる。
彼女の、人々の間をすり抜ける風のような声と
たおやかなサウンドを聴いていると、
「人生は流れていくものでもあるのだなぁ」
と思う。
明日の事は、明日の俺に聞いてくれ
っていう感じ。
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